†Orion†
コックコートに着替え、休憩室の壁に掛けられた時計を見る。
タイムカードを押すにはまだ早いな。
厨房に行ってすべての機器の電源を入れたあと、裏口のすぐそばにある大型冷凍庫へとむかう。
そのなかで、俺の頭のなかは、優菜さんとどう接するのかを考えていた。
優菜さんが出勤してきたら、まず挨拶。
朝は忙しくて、これまでも話をしたことなんてないから問題ないな。
問題は、休憩時間。
とりあえず、俺が正社員になるつもりでいることを話そう。
それだけで、場が持つはずだ。
キスしたときは夢中で、後のことなんかこれっぽっちも考えていなかった。
今はすごく気まずくて。
優菜さんと二人きりの時間をどうやってやり過ごすか、懸命に考えてしまう。