†Orion†
「……はい」
ここで振り返って相手の顔を見るのが礼儀ってもんなのに。
俺は背を向けたまま、返事をした。
ツカツカとこちらに向かって歩いてくる音がして、心臓がドキドキと高鳴り始める。
……なに?
なにを言うつもりなんだよ。
無言のまま迫ってくる足音に、恐怖さえも感じてしまう。
足音が止まると同時に、優菜さんの手が俺の袖をぐいと引っ張る。
無理やり後ろを振り向かされた状態になった俺は、ようやく彼女の顔を見た。
「お・は・よ・う!」
ふてくされたように、そして嫌味っぽく、優菜さんはもう一度、挨拶する。