†Orion†
出来上がったオムレツをデシャップ(※1)に置く。
レディコール(※2)を押すと、すぐに杉浦さんがやって来た。
「ありがとうね」
にこりと笑いながら受け取る杉浦さんに、俺は言葉も笑顔も返せず、無言で頷いた。
ディナータイムのメンバーとは、笑って会話することもできるのに。
相手が杉浦さんとなると、俺は無愛想で感じの悪い男になってしまう。
心の中は、“好き”であふれているのに。
だからこそ……なんだろうな。
(※1)・・・厨房とホールを仕切るカウンターのようなもの
(※2)・・・料理が上がったことをホールに知らせるチャイム