†Orion†
苦笑する優菜さんに、思わず驚いてしまう。
彼女の常識的な振る舞いや責任感から、てっきり、そういう経験があると思っていたのに。
「大学を卒業する直前に妊娠しちゃったから」
「あ……」
しまった。
また地雷を踏んでしまった……。
キャンプのときだって。
何気なく触れた、旦那さんのこと。
優菜さんは重い口調で、多くを語らなかった。
今だってそうだ。
いつもの笑顔が、微かに曇ってるし。
自然と、優菜さんの左手の薬指へと視線がいく。
何も嵌められていない、細長い薬指。