†Orion†


苦笑する優菜さんに、思わず驚いてしまう。

彼女の常識的な振る舞いや責任感から、てっきり、そういう経験があると思っていたのに。



「大学を卒業する直前に妊娠しちゃったから」


「あ……」



しまった。

また地雷を踏んでしまった……。


キャンプのときだって。

何気なく触れた、旦那さんのこと。

優菜さんは重い口調で、多くを語らなかった。


今だってそうだ。

いつもの笑顔が、微かに曇ってるし。



自然と、優菜さんの左手の薬指へと視線がいく。

何も嵌められていない、細長い薬指。


< 122 / 359 >

この作品をシェア

pagetop