†Orion†
しんと静まり返った休憩室。
厨房からは、料理長が慌しく料理を作る音が聞こえてくる。
俺の目の前にいる手の届かない愛しい人は、憂いの表情をしている。
「――きっと、目が覚めるときがくるよ」
「………」
「こういうところって、いろんな年代の人が集まるでしょ? 普段接する機会のない主婦とか」
「………」
ただ黙って、優菜さんの言葉を聞く。
「きっと雅人くんは、それを恋愛だと錯覚しているんだよ。若い子によくあるじゃない? 芸能人を好きになるのと同じ感覚っていうのかな……」
彼女の持論は、完全に間違っている。
でも、その真意は分からない。
本当に間違っているのか、これ以上俺が暴走しないように、わざと言っているのか。