†Orion†

*恋する苛立ち*



数日経ったバイトの日。

仕事を終えて帰ろうとした俺を、料理長が呼び止めた。



「……なんですか?」



みんなが自由に出入りできる休憩室のなかに、独立したかたちで設けられている事務室。

そこに改まって呼び出され、しかも御丁寧にドアまで閉められる。


緊張した面持ちでイスに腰掛けた俺に、料理長は言う。



「これからのことだけど、おまえが四年になった来年の夏頃に面談をすることになった。で、それまでのあいだに、食材の発注、管理、棚卸しとかを教えていくから」


「覚えることがいっぱいですね」


「絶対に留年するなよ」



溜息をつく俺に、料理長は笑った。


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