†Orion†


「……料理長」


「こないだの土曜……、おまえが休憩に入っているとき、聞こえたんだよ」



苦渋の表情で告白する料理長に、これ以上のことは言えなかった。

反省の弁を口にすることも、そして反論することも。


黙りこくっている俺に、料理長は「これから頑張れよ」と言い残して、事務室を出て行った。





その日を境に、土曜日のシフトがこれまでとすっかり変わってしまった。

毎週、俺が店開けだったのに。

そのポジションは料理長のものとなってしまった。


俺の土曜日のシフトは、優菜さんが退勤したあとだったり、休みだったり。

意図的に変えられていたんだ。


それが決して、悪意のあるものではないことは分かっていた。

社員になるという自覚をもつための期間であることくらい、ちゃんと分かっている。


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