†Orion†
俺だけが、取り残された状態だった。
「……こちらは?」
バッグを手にしたまま、呆然と突っ立っている俺に気づいた旦那さんが、優菜さんに尋ねる。
見ず知らずの若い男がいるってのに。
彼の表情はまったく変わらない。
それどころか、笑みを浮かべてさえいる。
「同じ店でバイトしている斉藤雅人くん。大学生で、一人暮らししているの。今日は夕飯でもご馳走しようかと思って」
優菜さんも、にこやかに俺を紹介する。
「はじめまして。優菜がいつもお世話になっています」
「あ……、いえ」