†Orion†


優菜さんは急かすようにして、階段に続くドアを開け、俺を待たずに行ってしまった。

あとを、追う。


質問の答えを聞きたくて、俺は先に階段を下りる優菜さんの腕を掴んだ。



「なんで、優菜さんも浩平さんも、指輪してないの?」


「……それは……理由なんかないわ。単に面倒だからよ。雅人くんも結婚すれば分かるわよ」



俺が、ただ過剰に反応しただけなのか?



「……今日で最後にして。この先、もう二度とあたしのことに関わらないで。

……雅人くん、暴走しそうになったら止めてくれって言ったよね?

やっぱりあたしには、止める自信がない」



掴まれた腕をほどきながら、優菜さんは言う。



「自信がないって……。優菜さんが言ってくれたら、俺はちゃんと……」


「自信がないから、雅人くんを奈緒たちや浩ちゃんに会わせたのよ? ……その意味が、分かるよね?」



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