†Orion†


「……ごめん。俺、帰らないと……」



俺を最初に拒んだのは、優菜さんだった。

でも今は、俺が彼女を拒む。


奈緒ちゃんとさくらちゃんを知ってしまったから。

浩平さんと時間を共有してしまったから。



ねぇ、優菜さん――……

それが目的だったんだろ?

君の思惑通りになったのに、ここで引き止めてしまったら、振り出しに戻ってしまうだろ?



「浩平さんや、奈緒ちゃんたちが待ってるよ」



なんだ……

俺……、ちゃんと自分の気持ちを抑えられるじゃないか。

振り返って、俺のシャツを掴む優菜さんの手を、振りほどく勇気さえもある。


< 176 / 359 >

この作品をシェア

pagetop