†Orion†
「――今日は……いろんな意味で、ありがとう」
ボソボソと呟くようにして感謝する俺に、優菜さんは何か言いたげな、切なさにも似た表情を浮かべる。
ここに来て、奈緒ちゃんとさくらちゃんの気持ちを痛いぐらいに知ったから。
それを教えてくれたのは、今こうやって、俺を引き止めている優菜さんだ。
「俺、優菜さんのこと、あきらめるように努力するから」
こんなことで努力しなければいけないなんて、思いもしなかった。
きっと――……
優菜さんと思いが通じ合うことよりも、それは辛いものになる。
「雅人くん……、あたしは……」
「言うなよ……、頼むから……っ……」
普段、俺は、人の気持ちにとても鈍感で。
ずっと一緒にいた、腐れ縁でもある弘美の気持ちにさえも気づかなかった。