†Orion†
でも、いま優菜さんが言おうとしていることは、痛いくらいに伝わってくる。
彼女が、泣いているから。
彼女が、また俺のシャツを握り締めるから――……
「奈緒ちゃんと、さくらちゃんが待ってるよ。母親って普通、添い寝してあげるもんだろ?」
「………っ……!」
皮肉まじりで言い放った俺の言葉に、優菜さんは悲鳴に近い声を一瞬あげた。
そしてまた、声が漏れないように空いたもう片方の手で口をふさぎ、声を押し殺して泣き出す。
うつむき加減のまま、俺のシャツを握り締める手が小刻みに震えていた。
これが、本当の“最後”だから――……
自分にしっかりと言い聞かせて、一度は引いた腕を、彼女の背中にそっと回した。