†Orion†
どれだけの時間、優菜さんと抱き合っていたのか分からない。
たぶん、正確に測れば、それはきっと驚くぐらいに短かったと思う。
抱きしめているあいだ、優菜さんは、
「あたしは、雅人くんを……」
と、中途半端なことを二度、口にした。
彼女が最後まで言えなかったのは、俺が言わせなかったから。
言葉で遮っても、彼女は無理やり言ってしまいそうだったから。
俺への気持ちを言葉にしてしまわないよう、唇をふさいだ。
けれど、一度だけタイミングがずれて、俺はとうとう聞いてしまったんだ。
「あたし……、雅人くんを好きに……」
それは、ずっと欲しくて、待ち続けていた言葉だった。
でも、いま俺がその言葉を受け入れてしまったら、きっと崩れてしまう。
世界でたったひとつの、“両親”という大切な存在が。
それを知れば、いちばん傷つくのは奈緒ちゃんとさくらちゃんだ。