†Orion†
4
*仕事の鬼*
このバイトを始めてから、夏休みが大嫌いになった。
ただでさえ暑苦しく、客の入りが半端じゃない夏休みなのに。
厨房は、灼熱地獄と化する。
そんな夏を毎年繰り返しているのに、厨房スタッフの制服は相変わらず厚手のコックコートだ。
暑苦しい制服も変わらない。
地獄のような厨房の熱気も変わらない。
だけど――……
「またオーダーミスですか? いい加減にしてくださいよ」
「ごめんなさい」
「……謝るのは俺じゃないでしょう? お客さんでしょう? すぐ上げますから、このサラダ、サービスで出してください」
たったひとつ、これまでとすっかり変わってしまったのは、俺だけだった。