†Orion†
優菜さんの家に誘われた日から、俺はすっかり変わってしまった。
夫と子供に囲まれた、幸せに満ちた家庭。
優菜さんを思う俺が、一歩たりとも踏み入れてはいけない神聖な領域にさえも思えた。
そして、彼女の涙。
俺が歩み寄ってしまえば、幼い無垢な子供を傷つけてしまう。
優菜さんが俺との人生を選択しないことは分かっているけれど……。
これまで、優菜さんを中心に回っていた俺の日常。
店の正社員になることを選んだのも、優菜さんのそばにいたかったから。
優菜さんを断ち切るのなら、正社員はおろか、今すぐにでも店を辞めるのが得策だと思った。