†Orion†
あの頃は正直うんざりしたけれど……
今になってみれば、それがとても大切なことであるのに気づく。
社会人としての心構え。
緩い学生生活のあとに飛び出す社会は、“オトモダチ”感覚じゃ成り立たない。
「あ……、そうだった……ね」
三枝さんに厳しいことを言ったのは初めてだ。
まさか俺に、こんな説教を受けるなんて思いもしなかったんだろう。
彼女は口元を引きつらせながら、精一杯の笑顔を作って言う。
「斉藤くん、お疲れさまでした」
「お疲れさまでした、三枝さん」
フォローすらせず、俺は休憩室のドアを静かに閉め、店を後にした。