†Orion†
夏休みの平日、俺はたまにランチタイムに入るようになった。
料理長の許しが出たわけじゃない。
単に、シフトに入れる人がいなかっただけだ。
あの日以来はじめて、優菜さんと顔を合わせるその日。
料理長は、俺と優菜さんのことを何度も目で追う。
まるで、何も起こらないように見張っているようだった。
……そんな無駄な心配、しなくてもいいよ。
俺はもう、大丈夫だから。
あなたの期待に、きっと応えてみせるから。
久しぶりに彼女と会話を交わしたのは、慌しいピーク中だった。
俺がデシャップに上げた、湯気のたつスープ。
ホールスタッフは、オーダー伺いや、会計、案内、片付けに必死になっている。
勢いよくたっていたスープの湯気は、次第に勢いをなくしていく。