†Orion†


あの日、浩平さんはどうして快く俺を迎え入れたんだ?

俺が帰ったあと大丈夫だったのかな……。



気になることは山ほどあるのに、決して訊くことはできない。


また、振り出しに戻る。

ほとんど話すこともない、ただ見ているだけの頃に。


これから先は、なにも進まない。進んだらいけない。

スタート地点で、足を止めたままにしておかないといけないんだ。



優菜さんに思いを残したまま、大学とバイトに打ち込む日々。


季節は優しく巡っていく。

街中をすり抜ける風は、生暖かい風から、涼しい風へと変わり。


コート姿の人があちこちに見られるようになった初冬。


思いも寄らない人が、俺を訪ねてきたんだ――……






< 195 / 359 >

この作品をシェア

pagetop