†Orion†
あの日、浩平さんはどうして快く俺を迎え入れたんだ?
俺が帰ったあと大丈夫だったのかな……。
気になることは山ほどあるのに、決して訊くことはできない。
また、振り出しに戻る。
ほとんど話すこともない、ただ見ているだけの頃に。
これから先は、なにも進まない。進んだらいけない。
スタート地点で、足を止めたままにしておかないといけないんだ。
優菜さんに思いを残したまま、大学とバイトに打ち込む日々。
季節は優しく巡っていく。
街中をすり抜ける風は、生暖かい風から、涼しい風へと変わり。
コート姿の人があちこちに見られるようになった初冬。
思いも寄らない人が、俺を訪ねてきたんだ――……