†Orion†

*木枯し*



「……斉藤くん、お客様が来てるけど……」



平日の夜十時。

勤務を終えて、休憩室で一息ついていた時だった。


もう俺のことを“雅人っち”と呼ばなくなった三枝さんが、遠慮がちに休憩室のドアを開け、俺を呼んだ。



「……誰?」



俺が訊くと、三枝さんは周囲に人がいないことを確認し、小さな声で言った。



「……杉浦さんの旦那さん」


「……浩平……さん?」



彼の下の名前を呟くと、三枝さんはホッとしたような顔をする。



「なんだ……、知り合いだったの」


「まぁ……そんな感じ」



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