†Orion†
「よかった。あたし、変なふうに考えちゃって」
「なんだよ、変なふうにって。そんなバカなことあるかよ」
休憩室を出る間際、俺は三枝さんの頭を拳骨で軽く小突いた。
平静を装い、ホールに向かう。
でも、胸のうちはあらゆることを考えてしまう。
優菜さんが、何か言ったんだろうか……
俺のことで、夫婦仲がおかしくなってしまったんだろうか。
心臓の鼓動が、次第に落ち着きをなくしていく。
浩平さんは、店の入り口に設置されたベンチに座って俺を待っていた。
スーツ姿。まだ家には帰っていないんだろう。
「……浩平さん?」