†Orion†


脱力した俺が、この時いつも思うのは、優菜さんのことだった。


ちゃんと、笑っているかな。

泣いたりしていないかな。


俺のこと……、心の中から、どのくらい消し去ってくれたのかな。



「……優菜――……」



もう決して、呼ぶことのないその名を口にすると、自然と涙がこみ上げてくる。


気を張り詰めていないと、ダメになる。

自分にも他人にも厳しくしていないと、脆くなってしまう。


だけど……、俺の意思に反して、心は悲鳴をあげる。



会いたい。
会いたい。


ゆっくり顔を見て、いろんなことを話したい。
この胸のうちをすべてさらけ出してしまいたい。


今もまだ、こんなに君を思っているのに――……



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