†Orion†
店を出たあと浩平さんは、俺を馴染みの居酒屋に連れて行った。
平日の居酒屋は混んでいる様子ではなかったが、酔っ払いが屯(たむろ)する場所。やはり賑やかだ。
運ばれてきた瓶ビールと、冷えたグラス二つ。
互いのグラスにビールを注いだあと、俺と浩平さんは「お疲れさまでしたー」と息のあった乾杯をした。
「仕事のあとのビールは最高だなぁ」
「……浩平さん、家でも飲んでいるんですか?」
「いや、まったく。職場の連中とたまに飲みに行くぐらい」
なぜ俺を呼び出したのか。
その理由を、浩平さんはすぐには言わなかった。
ただ楽しそうにビールを飲み、他愛ない世間話を繰り広げる。
「浩平さんの仕事って、一応は公務員になるんですか?」
「まぁ、一応は。俺、もともとは区役所勤務の公務員だったんだぞ」
「え、そうなんですか?」