†Orion†


あの日は、ただ、天文に携わる仕事がしたかった、としか聞いていなくて。

俺は少し驚いてしまった。



「区役所に採用されて、すぐにプラネタリウムに異動願を出したんだ。そうでもしないと、いつ、その仕事に就けるか分からないからな」


「それなら、直接プラネタリウムに出向けばいいのに」


「いや、それがさぁ、“プラネタリウムの解説員”って職の求人、めったに出ないんだよ。しかも俺、新卒だっただろ? 区役所にとりあえず就職したって感じかな」


「へぇ」



そんな裏話を、浩平さんは陽気に語る。


彼の話を聞きながらも、俺はいつ、優菜さんの話が出てくるのか気が気でなくて。

落ち着かせるかのように、次から次へとビールを喉に流し込んでいく。



次第に頭のなかがフワフワしてきた頃。

それまで俺の隣で、ふざけたように笑っていた浩平さんが、少しずつ、落ち着いた笑みを浮かべ始めた。


< 205 / 359 >

この作品をシェア

pagetop