†Orion†
あの日は、ただ、天文に携わる仕事がしたかった、としか聞いていなくて。
俺は少し驚いてしまった。
「区役所に採用されて、すぐにプラネタリウムに異動願を出したんだ。そうでもしないと、いつ、その仕事に就けるか分からないからな」
「それなら、直接プラネタリウムに出向けばいいのに」
「いや、それがさぁ、“プラネタリウムの解説員”って職の求人、めったに出ないんだよ。しかも俺、新卒だっただろ? 区役所にとりあえず就職したって感じかな」
「へぇ」
そんな裏話を、浩平さんは陽気に語る。
彼の話を聞きながらも、俺はいつ、優菜さんの話が出てくるのか気が気でなくて。
落ち着かせるかのように、次から次へとビールを喉に流し込んでいく。
次第に頭のなかがフワフワしてきた頃。
それまで俺の隣で、ふざけたように笑っていた浩平さんが、少しずつ、落ち着いた笑みを浮かべ始めた。