†Orion†


浩平さんが“任せる”とまで言ったんだから、願ってもないチャンスじゃないか。

子供なんて接する機会を増やせば、父親のことなんか忘れて、俺を必要とするようになる。

こんなに辛い思いをしなくてすむんだ。

俺が求めれば、彼女はすべてを受け入れてくれるんだ。



だけど、本当の自分はそれ以上にバカ正直で、必死に俺を引き戻す。



そんなことは、人の道に外れている。

大人の都合で子供を傷つけるなんて、おまえは最低な男だ。

おまえが優菜さんを忘れれば、それで済むんだ、と――……



どうして、出会ってしまったんだろう。

どうして、好きになってしまったんだろう。



もしも、優菜さんと出会わなければ、今ごろ俺は、淡々とした大学生活を送っていて。

夜は、店の厨房で黙々と料理を作って。


なんの悩みもない、平穏な毎日を送っていたはずだったのに。


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