†Orion†
もしかしたら、なんの障害もない子と付き合えて。
そこで起こる悩みといえば、しょうもない意見の食い違いだったり、簡単に解決できるものばかりだったに違いない。
優菜さんを断ち切れば断ち切るほど、思いは深くなっていく。
深ければ深いほどに、離れていく距離がやるせなくなる。
深夜一時。
俺と浩平さんは、ほんの少し静かになった居酒屋をあとにした。
「……浩平さん」
別れ際。
俺とは反対の方向に歩き出した浩平さんを呼び止める。
「優菜さんたちのこと、頼みましたよ」
そう言うと、浩平さんはにこりと笑い、俺に手を振って背を向けた。