†Orion†


同じ厨房スタッフのフリーター・佐々木に言われ、

あとで確認するのも面倒だと思い、俺は手を丁寧に洗うと、裏の大型冷蔵庫へと向かった。



「……チキンのカットに……、レタスカット……って、レタスは明日でじゅうぶんだろ」



ずいぶんと先走りしてスタンバイされた生野菜。

許容時間が半日しかもたない食材を、前日に仕込んでどうすんだよ。


憤りながらも、やってしまったもんはしょうがないと、呆れる。

明日のランチのスタンバイは、落ち度はあるものの完璧だ。



冷蔵庫の扉をぱたりと閉め、再び厨房の掃除に向かおうとしたとき、ゴミ捨てから戻ってきた弘美と鉢合わせする。



「……客、あとどれくらいいる?」



何気にそう聞いた俺に、弘美は「十人くらい」と素っ気無い返事をし、休憩室へと向かう。



「あっ、おまえ、サボんなよ」


「ちょっと用事があるの!」



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