†Orion†


「なんだよ、それ……」



自分で渡せよ、と思っているくせに。

俺の足は、弘美がいるホールじゃなくて、優菜さんがいる裏口へと勝手に動き出す。


キーッという軋んだ音を響かせながら、裏口のドアを開ける。



「あっ……」



こちらに背を向けて立っていた優菜さんは。

ドアを開けたのが弘美だと思い込んでいて、一瞬だけ笑顔を見せた。



「まさ………斉藤くん……」



でもそれが俺だと分かると、笑顔はすぐに崩れ、困惑の表情へと変化する。



「はい、これでしょう?」


「あ、うん。ありがとう……ございます」



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