†Orion†


俺の手のひらに転がった鍵を受け取ったとき。

優菜さんの冷たい指先が、一瞬触れた。

ただそれだけのことに、心臓がドキッとする。



「じゃあ……お疲れさまでした」



優菜さんはぺこりと頭を下げると、なんの躊躇もなく、くるりと俺に背を向けて歩き出した。



「あ……っ、杉浦さん……」


「え……?」


「歩いて……帰るんですか?」


「……はい」



――ちがう。

これは、彼女を好きだから、という気持ちのうえでの行動じゃない。

同じ店の仲間としての行動なんだ。


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