†Orion†


何度も自分に言い聞かせながら、俺は優菜さんに言う。



「もうすぐ仕事終わるから、送って行きます。こんな時間に、危ないですから」


「……いえ、大丈夫です」



少し考えたあと、優菜さんはにこりと笑って、優しく断った。



「何かあったら……、店にも迷惑かけるんですよ?」



胸が、ズキズキと軋んだ音を立てる。


俺は、真っ当なことを言っていると思う。

でも、相手が優菜さんだからこそ、そういうことを口にするたび、胸がしめつけられる。



“心配だから、送っていく”


そう素直に言えない、この状況に――……


< 225 / 359 >

この作品をシェア

pagetop