†Orion†
敬語で話したり、“斉藤くん”と呼び方を元に戻したり。
そうするようになったのは、あの日、優菜さんの家に行ってからだろ?
「……杉浦さん。俺、このまえ浩平さんと会ったんです」
「え……っ?」
優菜さんの足がぴたりと止まった。
驚いたように俺を見る優菜さんに、話を続ける。
「いろいろ聞きました。結婚した経緯とか、今のこととか……」
優菜さんの気持ちを知りたかった。
浩平さんと同じように、自分の欲求を優先しているのか。
それとも、奈緒ちゃんたちのことを考えているのか。
それを知ったからと言って、俺たちの関係が変わるわけでもないけれど。