†Orion†
「……でも、そんなに簡単なことじゃない」
優菜さんが俺の気持ちを跳ね返したら、反論すらせずに、俺はいつも引いていた。
でも今は、引くつもりなんかない。
浩平さんの心のなかに存在していたのは、優菜さん以外のひと。
奈緒ちゃんたちのことさえも存在していなかった。
……俺は、違う。
優菜さんと同じくらい、奈緒ちゃんたちのことも頭にある。
好きだった人が離婚してチャンス到来。
あぁ、確かにそうだよ。
優菜さんのそばにいられるのだから。
でも、それだけじゃない。
他の女のところに行ってしまった実の父親。
傷ついているであろう奈緒ちゃんたちを、俺が受け止めたいと心から思うんだ。