†Orion†
優菜さんと俺が出会ったのは、四年前。
そのときの俺はまだ学生で。
既婚者でもある優菜さんを好きになって、ただ見ているだけの毎日だった。
ずっとずっと、どこにも寄り道せず、彼女に続く道だけを真っ直ぐに歩いてきたんだ。
その夜は、少し話をしてから、俺は優菜さんのマンションをあとにした。
翌日、店への復帰初日。
俺たちは、いつものように挨拶と、必要最低限の会話を交わすだけだった。
“杉浦さん”
“斉藤くん”
とても他人行儀で言葉を交わし、時折目が合っても、互いに微笑みあうこともせず、自然に視線を外した。
交わる視線を外すときは、いつだって胸が痛んだけれど。
いまは、とても幸せな気持ちだった。
だけど――………
幸せへと向かって歩き出した道は、それまで以上に辛く険しいものだと、俺はまだ気づいていなかったんだ。