†Orion†
「親父は?」
「あぁ、お風呂よ」
「そっか」
実家に帰る気になったのは、「たまには帰ってきなさい」というお袋の言葉と。
もうひとつ、親父とお袋に報告することがあったから。
荷物を持って、実家に住んでいた頃に使っていた自分の部屋に行く。
二階のいちばん奥の部屋。
その手前には、三つ上の兄貴の部屋。
兄貴は親父と同じように商社勤務で、一人暮らしせずにここに住んでいる。
部屋に入って荷物を置き、携帯電話を取り出す。
「……もしもし、優菜?」