†Orion†


俺は無言で頷く。

いつ離婚したのか、とか、どうして離婚したのか、とか。

そういう詳しい話はとりあえず避けた。



「話にならんな」



言って、親父はグラスに注がれた酒を一気に飲み干す。


頭が古い親父にとって、バツイチ、子持ちはNGワードだ。

結婚相手は、結婚歴も子供もいない、そして妊娠もしていない、純潔な人に限る。



「……雅人。二人の子の父親になるってことが、どういうことか分かっているの?」



お袋は怒りもせずに、心配そうな顔をしたままだった。

本気で結婚したいと思っている俺は、自分の気持ちをぶつけようと口を開いたが……



「雅人――……」



言葉にする前に、親父が口を挟んできた。


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