†Orion†


親父は“もう何も聞きたくない”といった様子で、話の輪から外れた。


お袋は、同じようなことを何度も言ってくる。

すべて分かりきったことばかり。

俺が覚悟したことを、“できるの?”と確かめるように問い続ける。



「……お袋、腹減ったから早くメシ出して」


「悠斗(ユウト)っ!? あんたいつの間に帰ってきたの」



突然帰宅してきた兄貴に、俺も親父たちも驚いて一斉に振り返る。

リビングの入り口のドアに、スーツ姿の兄貴がうんざりしたような顔つきでもたれかかっていた。



「お、久しぶりだな、雅人」


「あぁ……おかえり」


「おまえさぁ、高校んときに俺が貸したCDどこにやったんだよ」


「……CD?」


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