†Orion†
兄貴はネクタイをほどき、上着をソファのうえにポンと投げる。
そして、シャツのすそを捲くりあげながら、顔をしかめて言った。
「エアロスミスのCD! 明日友達に貸す約束してるから、いますぐ探して持ってきて」
「……エアロスミス……?」
そんなCD借りた覚えもない。
……て言うか、兄貴に借りるくらいなら自分で買う主義なんだけどな、俺は。
「いいから早く探してこいって」
きょとんとしている俺に、兄貴は意味深な視線を送りながら言った。
あぁ、なるほどな。
あのときの料理長と同じだ。
嘘をついて、俺を窮地から救ったわけだ。