†Orion†


でもそれは、ほんの一瞬のことで、

“相手はどんな子なのか、学生なのか”

と、弘美は根掘り葉掘り聞いてくる。



その隣で沈黙を貫く俺。

頭のなかには、杉浦さんの笑顔が浮かんでいた。



あぁ、今のこの時間。

仕事が終わって、帰る準備をしている頃だな。


講義なんか受けずに、客として店に食べに行くのもよかったかも。



ぼんやりと杉浦さんのことを考えている俺の隣で、弘美は延々と、俺の好きな人の話題を続けている。


弘美には悪いけど、その話題は俺の耳には全く入ってこない。



でも、ある質問だけが、俺の耳をピクリと反応させた。



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