†Orion†
「奈緒ちゃん……、俺のこと覚えているかな」
俺が訊くと、優菜は少し間を置いてから言った。
『うん……、覚えているよ。たまにね、言うの。“お兄ちゃん、元気かな”って』
奈緒ちゃんと会ったのは、二年前。
しかも、たった一度、数時間を過ごしただけ。
それなのに、俺のことを覚えてくれているんだ。
「さくらちゃんは……覚えてないよね」
『ははっ、そうね。さくらは覚えてないわ』
「……やっぱり」
……無理もないか。
だってあのとき、さくらちゃんはまだ二歳だったんだし。
でも、奈緒ちゃんが未だに俺のことを覚えていることが、とても嬉しかった。