†Orion†
「あとね、パパと……」
「さくら! 早く行こう。奈緒が待ってるよ?」
浩平さんの話を続けようとするさくらちゃんに、優菜はお化け屋敷の前で手を振る奈緒ちゃんを指さした。
「あっ、お姉ちゃん! ずるいー、待ってよー!!」
奈緒ちゃんが抜け駆けして先に入ると思い込んださくらちゃんは、慌てて走り出した。
「……ごめん」
二人でお化け屋敷に向かって歩きながら、優菜がぽつりと呟く。
「いいよ。しょうがないよ」
「……うん」
ショックじゃないといえば、嘘になる。
でも、さくらちゃんの心のなかにいる浩平さんを、そう簡単に消せないのは当然のことだ。