†Orion†
「……料理長って、隠し子がいたりします?」
「……は?」
深夜二時。
閉店したあとも事務所に残って仕事をしていると、帰り支度を終えた契約社員の増田が気まずそうに尋ねてきた。
“料理長”
自分の胸につけていた名札を、俺は顔をしかめながら外す。
あれから七年。
誠実に仕事をこなしてきた結果、昇格試験をパスして、俺は“料理長”という肩書きを手に入れた。
「……隠し子なんかいるわけないだろ」
「そう……ですよね」
増田は腑に落ちないような顔をして、言葉を続ける。