†Orion†


尋ねてくるからには、まず自分の名前を名乗るだろう。

そう思って訊くと、増田は、しまった、という顔をする。



「……すみません、忘れました。名前……言ったんですけど……」



呼びに来た人間がこれだから、礼儀もなにもあったもんじゃない。


ほとほと呆れて、俺は重い腰を上げる。

そして、店の入り口に設置されたベンチに座っていると言うので、そこに向かった。



この近辺には、同じ系列の店が四軒ある。

そこをハシゴして、俺のことを捜していたという中学生くらいの女の子。


俺のフルネームまで知っている。

やっと俺にたどり着いたわけだけど、申し訳ないが、すぐに帰る羽目になるな……。


だって俺には、中学生の知り合いなんかいないから。


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