†Orion†


「お待たせしました。料理長の斉藤です」



ベンチに腰掛けた彼女に、後ろから声をかける。

黒のコートに身を包んだ彼女は、突然声をかけられて、大きく肩を震わせた。


そして、ゆっくりと立ち上がり、こちらを振り返る。



……なんだ。

やっぱり人違いだ。



「すみません、突然訪ねて来て……」



だけど……、どこかで見たことがあるような顔だ。

はにかんだように笑う顔が、何か懐かしいものを思い出させようとする。



「杉浦奈緒です。覚えていますか?」



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