†Orion†


「優菜の実家からここまで高速バスで四時間。しかも今は、平日の夕方。……もしかして奈緒ちゃん、学校サボった?」



前を向いたままハンドルを握る俺。

自分の顔が険しくなっているのを感じる。

でも奈緒ちゃんは、そんな俺に動揺することなく、クスクスと笑い出した。



「ねぇ、お兄ちゃん」



“お兄ちゃん”と久しぶりに呼ばれて、ドキッとする。

何の違和感もなく、さらりと口にした奈緒ちゃん。

俺のことをずっとそう呼んでいたんだろうと思わずにはいられない。



「今日は終業式だったんだよ? 働きすぎて日にちさえも分からなくなっちゃった?」


「あ……、そっか、だよなぁ……。今日は二十二日だったな」



言われてみれば、ランチのパートさんたちがそんなこと話していたな。

……すっかり忘れていた。


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