†Orion†


「お母さんは、お兄ちゃんのことずっと好きだよ」


「……奈緒ちゃん?」



信号が青に変わり、そのまま高速道路に乗る。

この道を、ひたすらに走らせれば、優菜に会える――……



「おばあちゃんがね、お母さんに再婚の話をいくつか持ってきたの。あたしとさくらのために父親が必要だって」


「再婚……」


「でも、お母さん全部断ったの。誰とも再婚する気なんかないって」



去年……だったかな。

久しぶりに実家に帰ったとき、親父が思い出したように俺に訊いてきた。



“そういえば、あの結婚の話はどうなったんだ?”



反対されて以来、一度も優菜のことには触れなかったから。


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