†Orion†


“……するよ。ただ今は、時間を置いているだけだよ”



優菜を待ち続けていた俺は、自信たっぷりに言った。


そのときの俺が、“料理長”という肩書きを得た直後だったからなのか。

それとも、“何度言ってもコイツは聞く耳をもたない”と諦めたからなのか。


親父は“そうか”と言うだけだった。



「……お母さん一人じゃ大変だから再婚してもいいんだよって、あたしが言ったら……。そこで初めて、お兄ちゃんのことを話してくれたの」


「俺のことを?」


「うん。とても好きだって。だけど、再婚できないって」


「………」



俺は口を挟まなかった。

優菜がどうして、再婚に踏み切れないのかを。


奈緒ちゃんとさくらちゃんのことを最優先しているから。

俺だって、奈緒ちゃんたちが乗り気でなければ、優菜と結婚なんてできない。


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