†Orion†
「……絶対、言うなよ?」
素直にハンカチで涙を拭いながら、ちらりと横目で奈緒ちゃんを見る。
「言いません! お兄ちゃん、見かけによらず涙もろいんだねー」
「……うるせぇよ」
“お兄ちゃん”
その呼び方が変わるのはいつなんだろう。
この子が俺のことを“お父さん”と呼んでくれる日が待ち遠しくて。
同時に、なんだかくすぐったい気持ちにもなる。
助手席でニタニタしながら俺の方をじっと見ている奈緒ちゃん。
泣いている自分が、とてつもなく恥ずかしくなってきて、俺は奈緒ちゃんの頭を軽く小突いた。