†Orion†


「……絶対、言うなよ?」



素直にハンカチで涙を拭いながら、ちらりと横目で奈緒ちゃんを見る。



「言いません! お兄ちゃん、見かけによらず涙もろいんだねー」


「……うるせぇよ」



“お兄ちゃん”

その呼び方が変わるのはいつなんだろう。



この子が俺のことを“お父さん”と呼んでくれる日が待ち遠しくて。

同時に、なんだかくすぐったい気持ちにもなる。



助手席でニタニタしながら俺の方をじっと見ている奈緒ちゃん。

泣いている自分が、とてつもなく恥ずかしくなってきて、俺は奈緒ちゃんの頭を軽く小突いた。



< 337 / 359 >

この作品をシェア

pagetop