†Orion†
涙をポロポロこぼしながら、何かを訴えようとしている優菜。
でも、それは声にならず、俺は何度も訊き返す。
「どうした? 優菜?」
「……さくらが……あのなかに……」
「……さくらちゃんが?」
「あたし……、ちょっと買い物に出てて……。帰ってきたらこんなことに……」
震える声でそう言ったあと、優菜は気が抜けたようにその場に座り込んでしまった。
今夜はいつもより空気が乾燥している。
そして最悪なことに、風も、いつもより強い。
消防隊員が消化ホースで鎮火にあたっているけれど、火は収まるどころか勢いを増しているように見える。