†Orion†
熱さなんて、慣れっこだよ。
夏休みの厨房は、灼熱地獄なんだから。
……まぁ、さすがに、この熱さとは比べものにもならないか。
業火の中、濡れた袖で口と鼻を覆い、さくらちゃんの姿を探す。
少しでも気を抜いたら、煙を吸い込んでしまいそうだ。
「……さくらちゃん?」
誰の部屋かは分からない。
とにかく、部屋の一番奥で、さくらちゃんが倒れていたのが見えた。
「……だれ?」
よかった、ちゃんと意識があった。
……俺が誰かって?
君と奈緒ちゃんの、新しい父親になる男だよ――……