†Orion†
「当たり前だろ? “斉藤奈緒”って呼ばれるんだぞ? 俺の娘だぞ?」
カメラを調整するときに、きらりと光る左手の結婚指輪。
あの日――……
病院で、一度止まった雅人の心臓は、再び動き始めた。
幸いなことに、心肺停止の後遺症は見られず、驚異的なスピードで回復していった。
“やっぱり、優菜を思う気持ちは最強だ”
神様のくれた奇跡に泣きじゃくるあたしたちに、雅人は笑ってそう言った。
あれからあたしと奈緒たちは、しばらく実家に身を寄せていたけれど。
雅人との入籍を機に、以前住んでいたこの町に戻ってきた。