†Orion†
「……店長。コイツはホールにはあげられないですよ?」
ホール兼任への誘いを執拗に続ける店長のもとに、調理が一段落した料理長がやって来た。
鬼のように厳しい料理長。
新人の頃は、よく怒鳴られたもんだ。
……まぁ、今もそうだけど。
「斉藤は大学を卒業したら、ここの社員になりたいって言っているんだから」
……はい?
大学三年の春という今の時期。
俺は早々と就職活動を始めているけれど、このファミレスへの就職なんて頭にまったくない。
ファミレスの厨房なんて、ただの一人暮らしの生活費稼ぎであって。
それを生業とする気持ちなんか、更々なかった。